人生には、就職、結婚、出産、育児、介護などのライフイベントが発生します。
女性は、このようなライフイベントの影響を受けやすく、仕事と家庭を両立しながら能力を発揮していくためには、
キャリアステージごとに、ライフイベントを踏まえて想定される課題の解決が必要です。
女性の活躍の場を広げていくために、キャリアステージごとの企業側の課題への対応やポイントについてお答えします。
1募集・採用
なぜだろう?何から始めたら良いだろう?
要因・課題例
- どのような仕事・働き方ができるのか、企業情報が学生まで届いていない。
- 女性従業員が少なく、女性が働ける職場というイメージがない。
- 女性従業員のキャリアや働き方についてイメージを持っていないため、新卒採用にあたって女性に訴える力がない。
ポイント
- やりがいをもって働くことができる環境や、結婚・出産後も安心して働ける環境を整備し、それを幅広く学生や学校にPRしましょう。
また、企業ホームページや就活サイト等でも情報発信しましょう。 - これまで男性中心と思われている業種や職種でも、女性の採用があり、活躍していることをPRしましょう。
- 女性従業員のキャリアパスを示して、具体的なキャリアと働き方をイメージしてもらうことが必要です。
女性にどのような活躍を期待するのか、会社の方針を定めてPRしましょう。
具体例
- 自社のHPやNなびで女性従業員が活躍している様子を動画などで紹介
- 企業説明会・就職相談会での情報提供
- 職場見学会、インターンシップの受入
- ながさき女性活躍推進会議の自主宣言登録、女性活躍推進法の行動計画策定・公表など、会社の方針を社内外に示す
2初期キャリア(入社・初任配置・育成)
これまで男性が担当していた業務を任せたいが大丈夫か?
要因・課題例
- これまでの慣習から女性が配置されてこなかった仕事、職場がある。
- 男性従業員にも、女性従業員にどのように接したらよいか戸惑いがある。
- 管理職が女性従業員のマネジメントに慣れていない。
ポイント
- 男性と同じように、配置や仕事の割り振り、育成を行うことが重要です。
「女性だから」という理由で過剰に配慮する必要はありません。
ただし、女性が孤立することのないように目配りやサポートが必要です。 - 個別のケースのみをとらえて「女性には任せられない」など、女性に期待をかけなくなってはいけません。
男女ともに長期的なキャリアを見据えた配置・育成が必要です。 - 男女問わず上司や先輩等と相談できる環境をつくりましょう。
社内に女性が少ないなら、社外の同業種・異業種でのネットワークづくりも有効です。 - 一般的に入社の頃は、仕事に没頭することも多くあります。
リフレッシュすることが大事ですので、長時間労働の防止やプライベートの充実にも配慮が必要です。
具体例
- メンター制度*の導入
- 女性が少ない部署への積極的な配置
- 体力面の負荷を軽減するような設備・機器の導入や作業工程の見直し
- 社内女性のネットワークの設定などコミュニケーションの場の提供
- 社内の人材育成プランの策定や社内外の幅広い研修機会の提供
- 管理職の意識改革(マネジメント研修の実施など)
メンター制度とは
豊富な知識と職業経験を有した社内の先輩社員(メンター)が、後輩社員(メンティ)に対して行う個別支援活動です。キャリア形成上の課題解決を援助して個人の成長を支えるとともに、職場内での悩みや問題解決をサポートする役割を果たします。
3初期キャリア(結婚・妊娠・出産)
妊娠・育児期間の社員にどう接したらよいのだろうか?
要因・課題例
- 結婚・出産を機に、女性が離職してしまう(一から採用、教育をしなければならない)。
- 育児休業・休暇制度を整備したのに、実際には活用されていない。
- 育児休業取得の際に、代替要員が確保できない。また、確保するのに経費がかかる。
- 育児休業からの復帰に向けて、様々な不安を抱く女性がいる。
ポイント
- 仕事と育児の両立支援制度を整備し、男女に関わらず広く従業員に周知しましょう。
- 妊娠中の配慮は必要ですが、過度の遠慮はせず役割・経験・体調に見合う仕事を任せましょう。
そのために、体力面や妊娠中に配慮して欲しいこと、勤務にあたっての制約や希望、可能な仕事の範囲などを本人に十分確認しましょう。 - 急な体調不良の際など、職場全体でサポートできる体制を整えるために、仕事の進捗状況や情報、書類の整理・共有など職場内の業務を見直しましょう。
- 会社(職場)から社内情報を提供するなど、休業中の女性とのつながりを保つことで、復帰への意欲を維持させることが必要です。
- 妊娠中の女性に対し、管理職(特に男性)が配慮すべき点を周知しましょう。また、インターネットで公開されているパンフレットなども活用しましょう。
- マタニティ・ハラスメント(= マタハラ)*は厳禁です。マタハラについての理解を深めましょう。
マタニティ・ハラスメント(マタハラ)とは
妊娠・出産・育休などを理由とする、解雇・雇い止め・降格などの不利益な取り扱い。
具体例
- 両立支援制度の整備と制度を周知するための社内研修の実施
- 休業前、休業後の面談の実施
- 休業中の社内情報の提供や自己啓発機会の提供
4中級キャリア(昇進・昇格)
管理職になるための経験不足をどうしたらよいか?
要因・課題例
- 女性従業員の数が少ない。管理職候補となる女性が少ない。
- 能力がある将来の管理職候補はいるが、まだ若くて経験が不足している。
- 女性従業員のキャリア形成の機会が少ない。
- 管理職になると労働時間が増え、育児や家事に影響が出るなど、女性が管理職になりにくい職場環境がある。
- 転勤が女性の昇格のネックとなっている可能性がある。
- 企業側に「女性は管理職になりたがらない」という先入観がある。
ポイント
- 女性従業員を対象としたキャリア研修や管理職候補者への研修の実施、または外部研修への参加を促進しましょう。
- リーダーシップを発揮する機会の提供(社内プロジェクトのリーダー任命など)や、
職域の拡大に向けた中核業務への配置などにより育成することが必要です。 - 女性同士のネットワークづくりを支援し、管理職になることの不安を払拭することで、自信とモチベーションを高めることも有効です。
- 労働時間が増える心配に対しては、働き方の見直しを通じた業務の効率化を目指しましょう。
- 転勤が女性の昇格等のネックとなっている可能性があれば、昇進・昇格にあたり転勤が真に必要なものなのか、
転勤に代わり評価できる職務経験はないのか検討しましょう。
女性の心理「詐欺師症候群」をご存知ですか?
「自分は評価に値する人間だとは思わずに、たいした能力もないのに誉められてしまったと罪悪感を覚え、まるで誉められたことが何かのまちがいのように感じること。十分な実力がありながら理由もなく自信をもてずに悩む症状でImpostor=ペテン師の意味。自分の業績を誉められると、詐欺行為を働いたような気分になり、そのうち化けの皮がはがれるに違いない、などと思ってしまう。女性の方がなりやすく、この症状に束縛されやすい。」(シェリル・サンドバーグ著『LEAN IN―女性、仕事、リーダーへの意欲―』(日本経済新聞出版社)より)
こうした特有の心理により、女性は「やる気がない」「仕事に対して後ろ向きだ」「上昇志向がない」と誤解されやすい。女性も男性も、女性にはそのような傾向があることを理解しておくことが大事です。
5中級キャリア(育児との両立)
要因・課題例
- 時間制約のある女性に対して重要な仕事を任せることに躊躇する。
- スキルに見合う仕事を割り振られないことから、能力のある人材のモチベーションを下げてしまう。
ポイント
- 時間制約のある従業員が職場に存在することを前提とした働き方の提供やマネジメントが必要です。
- 職場全体の働き方を見直し、周囲の同僚の負担が重くならないよう業務の効率化を図るなど、
サポートしあえる職場づくりを行いましょう。 - 職場の役割分担を見直すことで、育児休業前と休業後で、できるだけ同じ業務を担当してもらいましょう。
- 勤務時間の長さではなく、生み出した成果の大きさや効率良い仕事ぶりを評価するなど、公平な評価制度が必要です。
- 役割・スキルに見合った仕事を任せ、適正に評価することで、マミー・トラック*に陥ることを防ぎましょう。
マミー・トラックとは
「マミー・トラック」とは、仕事と子育ての両立はできるものの、昇進・昇格とは縁遠いキャリアコースのこと。職場の男女均等支援や仕事と育児の両立支援が十分でない場合、補助的な職種や分野で、時短勤務を利用して働くようなキャリアを選ばざるを得なくなり、不本意ながら出世コースから外れた「マミー・トラック」に乗ってしまうことが少なくありません。
「マミー・トラック」から抜け出せず、 仕事にやりがいを持てなくなっていくという女性も多く、勤労意欲を失い退職していくこともあります。
具体例
- 働き方の柔軟性の確保(短時間勤務・フレックスタイムの導入など勤務時間の柔軟性、在宅勤務制度の導入など勤務場所の柔軟性)
- 半日単位や時間単位の有給休暇の導入
- 職場全体での業務の見直しと効率化の推進
- 評価制度の見直し(効率性や成果を評価、サポートによる貢献を評価)
6後期キャリア(介護との両立)
要因・課題例
- 介護の問題を抱えている従業員を把握することや、今後の予測が難しい。
- 介護そのものに対する不安に加え、どうすれば仕事と介護の両立ができるか、わからない。
- ダブル介護やダブルケア*など、従業員が抱える事情が複雑である。
ダブルケアとは
育児期にある者(世帯)が親の介護も同時に引き受ける「育児と介護のダブルケア」。
近年、晩婚化・晩産化等を背景に問題が指摘されるようになってきている。
ポイント
- ご両親等の看護・介護に関する実態やニーズを把握しましょう。
- 必要な制度の導入、見直しを行いましょう。制度を整備するだけではなく、従業員に周知して企業としての方針を知ってもらうことで、介護の問題に直面しても仕事を続ける意識を持ってもらうことが重要です。
- 社内で「おたがいさま」の意識を醸成し、サポートしあえる職場づくりを検討しましょう。
- 職場全体でサポートできる体制とするために、仕事の進捗状況や情報、書類の整理・共有など職場内の業務を見直しましょう。
具体例
- 介護の実態や仕事と介護の両立支援に関するニーズ調査
- 働き方の柔軟性の確保(短時間勤務・フレックスタイムの導入など勤務時間の柔軟性、在宅勤務制度の導入など勤務場所の柔軟性)
- 半日単位や時間単位の有給休暇の導入
- 職場全体での業務の見直しと効率化の推進
- 社会的支援に関する情報提供や相談窓口の設置